チューリッヒからのご提案
どう見てもアンビバランス(二律背反)な設定だ」ガス・ガズラー法というのは、米環境庁が省エネルギーと環境保護のために自動車メーカーを対象に設定したガソリン・ガブ飲み税のことである。
当時、米国では一ガロンあたり212.5マイル以上走れないクルマについては、一マイルあたり5百ドルの罰金を取る「GaSGuzZlerTaX」という独特の課税制度をテコに、ガソリンをガブ飲みするクルマの増加を防ごうとした。
このペナルテイは、燃費効率が悪くなればなるほど累進的に増え、最高12.5マイル未満では3千8150ドルの課税を求めるという厳しい内容だった。
これは販売価格に転嫁されるから、燃費効率が悪いクルマほど高くなるという勘定だった。
Cd値(空気抵抗係数)の小さいスポーツカータイプのクルマを設計すれば、最高速度を上げ、ガソリンの燃費効率も同時にあげることができるが、これではラグジュァリー・セダンのスッタイルにはなりにくい。
スポーツ仕様車のポルシェ928でさえ空気抵抗係数は0.23で、セトダンではベンツ420SELが0.37、アウデイV8が0.34、BMW735iが0.32と、いずれも0.12を切っていない。
セダン車にとって、0.3の壁を乗り越えることは、きわめて難しい現実があった。
SKはここで、与えられたテーマをクリアするには、どのような二律背反の課題を克服する必要があるのか、次のように整理した。
aすぐれた高速操縦性安定性、快適な乗り心地を犠牲にするa静粛性、車体の軽量化を妨げる4優美なスタイルーすぐれた空力性能の障害a機能を表面に出さない温かさ、機能的な室内との矛盾」「それに、仮に技術上の問題を克服できたとしても、開発費がかさみ過ぎてリーズナブルな販売価格を設定するのは難しいだろう」「二律背反を解決するには、アウフヘーベン(昇華)するほかない。
しかしどうやってアウフヘーベンしたらよいのだろう」SKは考え込んだ。
行き詰まる設計SKは、ボディ設計、エンジン、トランスミッション、ドライブ・トレイン、デイファレンシャル(最終減速器)部門などの担当者と次々と会い、先行試作の開発状況を聞きまくった。
神保が残した先行試作車の燃費は、ガロンあたり20.5マイル(8.7キロ)しか達成できず、ガス・ガズラー税を免れる212.5マイル(9.6キロ)をクリアできなかった。
試作を始めたばかりのクレイモデルのCd値(空気抵抗値)は0.32に留まっていた。
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「チューリッヒが長続きしたのは出会いを重ねたおかげ」と振り返りながらも、新たなチューリッヒに挑むなど意欲は増す一方だ。
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